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雪道

スクリーンショット

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総論

 雪道(せつどう)は2005年にポーン氏によって公開されたシンプルタイプのRPGです。雪道を歩き続ける得も言われぬ雰囲気と、ステッパーズ・ストップ(通称ステスト)作品ならではの緻密なパラメーターバランス、シュールな世界観が見事に融合した良作です。

 本作は「雪道」の名の通り、ひと気のない雪深い道を女の子がただひたすらに歩き続け、その道中に現れた敵と戦いながら自身を成長させていく作品です。それまでの経緯やストーリーの類も始めは一切触れられておらず、ただひたすらに孤独な旅路を強いられます。

 プレイ方法は非常にシンプルで、基本的には「進む」コマンドのみを使用して進行していきます。数歩進むごとにランダムで何かが起こり、100歩ごとにステージのボスが出現します。敵と遭遇した際には「戦う」と「逃げる」の選択コマンドがある他、一時的に武器・防具をブーストする事のできる「ドライヴ」と「フリップ」、いざという時に敵に大ダメージを与える事のできる「奥の手」があったりします。敵と戦う事でレベルが上がっていき、「制御」コマンドを利用する事で自身の最大HPと引き換えにスキルの取得やステータスをアップさせる事が可能となっています。

 また、本作は「マッチ売りの少女」の影響を受けているらしく、作品内ではマッチが重要な役割を担っています。マッチを擦る事で少量のHPを回復したり、セーブキャンドルに火を灯してセーブする事ができたりする他、お金替わりにして宿代やアイテム購入などに使えたりもします。マッチは何故か道端に落ちているので、プレイを続けていると自然に拾い集める事が可能となっています。

 グラフィックはラフでシュールな絵柄がなかなか良い味を出しています。BGMはflying lucifer(アンディー・メンテジスカルド)氏が手がけており、オープニング〜序章において流れる曲(マッチ10本がきみの値段)が突出して良いです。温もりのあるアコギインストが作品の持つ寒く厳しい世界観と見事に対比していて、憧れの情景のようなものを思い起こさせてくれます。

 全10ステージ、マップ探索の類は一切無く、完全に一本道の作品となっています。運の要素も強いですがセーブポイントからやり直す事が可能なので、諦めずに何度でも挑戦すると良いでしょう。

 手軽に出来るRPGをお探しの方、システム重視のRPGが好きな方にお勧めの作品です。

各論

 ステストの代表作の一つ、雪道です。雪道を一歩一歩踏みしめながら進む道のりはただひたすらに孤独で、寒くて、辛くて、終わりなくて……でもその苦しみこそが本作の醍醐味であると言える訳です。「マッチ売りの少女RPG(マッドネス風味)」とでも言いましょうか、本当に個性的な作品だと思います。

 雪道を歩く趣きのある雰囲気とは裏腹に、作品自体は非常にシュールな世界観となっています。例えばキャラクターの名前や造形が不可思議だったり、マッチがお金替わりで道端に落ちていたりするのもそうですが、未開の地に佇む「自動販売機」の存在や、防具が「絹」や「毛布」に「一反木綿」だったりと、ステストやAM作品特有の何でもあり感が強いです。

 また、本作は確かにシンプルで操作も比較的楽なので、カジュアルなタイプのRPGに分類されるのかもしれませんが、実際にプレイしてみると作品の持つ「ストイックさ」にすぐに気が付くはずです。
 主人公を強化する為には「最大HP」と引き換えに「制御」を利用する必要がある訳ですが、「レベルアップ時のHP上昇値が相対的に低い」ので、普通にステ振りをすればあっという間にHPが減ってカツカツ状態になってしまいます。それを補う為にも「装備」を手に入れる必要がある訳ですが(本作では装備品そのものが敵キャラとして存在しており、それらを倒す事でその装備を入手する事ができる)、「敵が出現するかどうかは完全に運任せ」な上に、「欲しい装備の敵は基本的に自分よりも格上」なのでかなりの苦戦を強いられます。購入するにしても、「値段が高すぎる」ので殆ど全財産をつぎ込む羽目になり、今度はマッチ不足に悩まされてしまいます。
 それらに加えて説明書では殆ど触れられていない「呪文構築」の存在が輪をかけて厄介です。呪文は確かに強力で有用なのですが、そこに辿り着くまでの「必要経費(マッチ及び最大HP)」が結構かかる上に、「特定のワードに出会えて構築できるかどうか」は「プレイヤーの運と気付き」にかかっています。
 それでも通常クリアだけならばボスから逃げてレベリングを続けていればいつかは道が開けるのですが、隠しステージクリアまで目指すとなれば話はまた変わってきます。そこでは「運を確実に味方につける必要」があり、「ギリギリのステータス管理」と「ロード地獄」という更なる厳しい世界が待ち構えています。

 ステッパーズ・ストップ作品及びポーン氏が慕っているアンディー・メンテ(AM)作品はどれも独創性に富んでいて素晴らしいです。彼らが作るフリーゲームはお世辞抜きに芸術の域にまで達しており、ただ楽しいだけじゃなくその根源には彼らなりの思想やインスピレーションがしっかりと刻まれており、プレイする者に驚きや問いかけ、深い感銘を与えてくれます。本作を気に入ったのであれば、ぜひ他の作品もいろいろプレイしてみて下さい。

 あとがきのオチには笑わせて頂きました。何れにせよこういった素晴らしい作品が世に出てきてくれた事を大変喜ばしく思います。

関連リンク

動作環境

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製作者情報

ポーン(ステッパーズ・ストップ / パラメータ・サンクチュアリ)

補足、攻略情報など

「制御」は「最大HP」と引き換えに自身を強化する事のできる、諸刃の剣とも言うべきコマンドです。無計画な使用はそのまま死にも繋がってしまうのでご注意下さい。

瀕死の状態や最大HPが低い状態でセーブをしてしまうとそのまま詰まってしまう可能性があります。セーブをする際にはある程度の余力を残しておくようにしましょう。

詰まってしまったりリセットしたい場合は、ゲームフォルダ内の「save.dat」ファイルを削除すると良いです。逆に同ファイルをコピーする事で簡単にバックアップを取る事もできます。

本作には「StageAnother」という名の隠しステージが存在します。辿り着くための条件は「奥の手を使わずに1000歩(ボスから1度も逃げない)でクリアする事」です。ある意味本作のキモとも言える難易度になっているので、2周目以降にでも挑戦してみると良いでしょう。